「どうして? アッシュ……なんでいるの??」
「それはもちろん三年振りにリルが来るって聞いたからだよ。予定時刻にきっかり帰還するなんて、さすがは一等操船士のママだね」

 唖然とするあたしに向けられる、変わらないにこやかな微笑み。『アッシュ』という愛称の通り灰色掛かった淡い碧眼(へきがん)が、嬉しそうに細められ潤んだ。ヘーゼルナッツ色のサラサラな髪は、以前より少し短めで耳が隠れるくらい。そして……顔つきは三年前に会った時よりも少し大人っぽくなって……美麗振りも更に増していた。

「でも……何も朝から出迎えることなんてないのに。アッシュだってしばらくいるんでしょ? これから毎日会えるじゃない」
「ううん? 一刻も早くリルに会いたかったのに? 待ってちゃ迷惑だった??」
「そ、そんなことないけどさ~……あ、あたしも、アッシュに会いたかった、よ……」

 あんまり積極的に「会いたかった光線」を出されちゃったら、面と向かって言えないじゃない。

 あたしは少し俯いて、鼻の頭を赤くしながら小声でアッシュに呟いた──ら?

「ありがと~リル! 僕も一層可愛くなったリルに会えて嬉しいよ。お陰でパジャマ姿の姫も見られたしね! では~お礼に洗面所までお連れしましょう」
「え!? ちょっ……!!」

 言葉半ばにして抱き上げられてしまった! アッシュは軽々とあたしをお姫様抱っこして、スタスタとテーブルの横を通り過ぎ──。

「ル、ルク!?」

 見下ろす景色のチェアの背もたれ。その後ろに隠れる……赤茶色の頭頂部? 気付いたあたしは思わず叫んでいた。出迎えはもう一人いたのだと──!!






*お読みくださり誠に有難うございます*

 前作『ラヴェンダー・ジュエルの瞳』からお読みの読者様は、今話登場新キャラ君の「繋がり」に気付かれるかも知れません。
 ヒントは彼の描写とイラストです♪