「えっ!?」

 それって自分を犠牲にしたってこと!?

 目の前のエルムはただ「エヘヘ」と照れ笑いをしてみせたけど、いえ、そんなの……普通出来ることじゃないってばっ!!

 ──お姉ちゃん達はねぇ~三人共みーんな綺麗で優しくて素敵だったんだよ! リトスもとってもかっこ良くて、紳士で働き者で、アタシはもちろん、お姉ちゃん達もリトスが大好きだった。それをリトスも気付いていたんだよね……だからリトスは選べなかった。……あ! アタシが選ばれるなんてことないのは、初めから分かってたんだからねー!……

 そう言ってエルムは顔を真っ赤にしながら弁解した。久し振りに見た赤いほっぺに、ツパおばちゃんを、ルクを、懐かしく思い出した。エルム、本当にリトスのことが大好きだったんだね。そして三人のお姉さん達も……「ラヴェンダーで生計を立ててきた三家系の娘達」。ツパおばちゃんとルクの家系──薬を調合する【癒しの民】と、タラお姉様の家系──染色した糸で紡ぐ【彩りの民】、そしてママの家系──芳香を司る【薫りの民】。三人のお姉さん達も好意を寄せていたのに、誰も選べなかったリトス……「選べなかった」──以前サリファが言った言葉を思い出した。

『ジュエルも結局「全て」を求めた……それは何故だ? ジュエルは「全て」を欲っしたからではない……単に選べなかったからであろう?』

 あれは一体どういう意味だったのだろう──?