ママを無事に受け止めたパパが、そのまま沈んだ反動を利用して踏み込み、空けた右手をあたしへ向け跳んだ! 抱えられているママの左手も同時にあたしへ伸ばされていた。なのに二人の指先はギリギリ届かないまま、パパとママは地面に倒れ込み、あたしはもう半分光の中へ、そしてパパの手中に握られている筈のジュエルは、いつの間にか消えていた!!

 目の前から放たれるラヴェンダーの微かな香りと、穂のような細長い淡い紫光──って? 空飛ぶジュエル!?

「ジュエル、お願い!」

 どうせ来るのならあたしの中に入ってよ! あたしを宿主に戻して、力を与えて!!

 心の中でひたすら拝んだ。けれどあたしの義眼はピクリともしない。この眼が外れなければ、ジュエルはあたしの元に戻れない。だからジュエルは単身サリファに挑もうとしているの!? だったら──

「来ちゃダメぇ! ジュエル!!」

 あたしの叫びに刹那「何か」が反応を示した!?

 パパの胸ポケットから勢い良く飛び出す小さな毛むくじゃら! 徐々にあたしに近付くジュエルを追いかけてきたその姿は──!!

 丸まった灰色毛玉がパッと飛膜を広げ、小さなマントに変わる!

「ピータン!!」

 なのに何を思ったのか、ピータンは宙を流れるジュエルを捕まえず……

 パクッとお口でキャッチした──!?