「実際以上のことは、私が王家の図書室の奥の奥、たった一冊の文献から得た情報です。遥か(いにしえ)のことですから、私達三家系の娘の名も記されてはいませんでした。四人目の娘の素性が知れないのは、彼女の家系が(つい)えてしまったからでしょう。つまり……名も知れぬ娘は、子を産むことなく亡くなってしまった……ということです」

 ……なるほど。でもこの戦いで滅ぼされた「ヴェルの素」らしき町のお話から、一体何が見えてくるというのだろう?

 ツパおばちゃんは物語を整理するように、深く長い息を吐き出した。眼下に伸ばした足先を臨む赤い瞳が、続きを語り出すためにゆっくりと持ち上げられた。

「残念ながら唯一の文献にも、『彼女』についてそれ以上のことは描かれていません。ですが……私は『彼女』こそが、サリファであると推測しています」
「「「ええっ!?」」」

 そんな大昔からサリファは生きていた!?

 余りに突拍子もないおばちゃんの考えに、三人の大声が森の繁みに反響(こだま)した──!!



[註1]三家系が持つ【 】の名の意味:二話先にて説明が入りますので、前作をお読みでない方は暫くお待ちくださいませ。