「おそらくユスリハの髪を元にして生み出したのでしょう……」
「ママの……ホワイト・ゴールドの髪……」

 ママの両親を殺した憎むべきザイーダを、ママ自身が生み出すきっかけになってしまったなんて……ママはその経緯を見てしまったのだろうか? せめて……眠らされていてほしい。そう願うしか今は何も出来なかった。

「……とにかく無事で良かったよ、リル」
「あっ……う、うん」

 あたしの気を取り直そうとしてくれたのだろう、アッシュが弱々しくも微笑んでこちらを向いた。ありがとうとお礼を伝えなくちゃいけなかったのに、昨夜みたいに近付く顔に驚いた瞬間、強く抱き締められて身体が硬直した。

 重なった胸がドキドキしてる。また頬が熱く感じて……これって、あたし……アッシュのこと、好きになっちゃったんだろうか……??

「──あっ!!」

 ってことは、ツパおばちゃんも弓のお師匠様のことが好きだってこと──!?

「荷物の番をしながらルクも心配しているから、先を急ごう」

 あたしを解放したアッシュは壁をよじ登り、手を伸ばしてあたし達を崖の上に引っ張り上げてくれた。

 そうよ、そうよ! ダメだなぁ~鈍感にも程があるでしょーリルヴィさん!

 ツパおばちゃんの恋バナ、根掘り葉掘り聞かなくちゃ!!

 あ? いえその前にアイガーよね!? 十匹も子犬を産んでくれた愛妻ちゃんのお話を聞くべきですよ!

 と、同時に思ってしまった。あたしの可愛い「お姉ちゃま」ピータンにも、早くステキなお婿さんを見つけてあげないとね──!!



[註1]ザイーダ:今作の第一話にて、リルヴィの母ユスリハの両親が、化け物に襲われ亡くなった事は説明しておりますが、実際にはリルヴィの父ラヴェルの家族も、ザイーダにより命を奪われております。