『あっ、3組の選手が転倒しました──』



体育祭のリレー。
1人転んだ倉木が、歯を食いしばるわけでも、涙を浮かべるわけでもなく。

ただ、ずっと前だけを向いていたのが印象に残ってる。




「──っ、え……?」



転んでケガする方が辛いのに、俺のことになるとすぐに泣きそうな顔をするんだから、
倉木って、やっぱりどこかズレてる。



『私、八千代くんが笑ってくれるなら、何でもするよ』



こんなことを自分から言ったくせに、



『……あげないで。』
『八千代くんのことを、これ以上誰にも見せたくなかった……』


『──お願いだから、誰のものにもならないで』



泣きそうな顔で、こう言うんだから。