「買い物かぁ〜。いいね」

話しながら杏菜は席に案内され、髪の毛が服につかないよう袖付きのツルツルした服を着せられる。そして、「本日はどんなカットとカラーにしますか?」とニコニコしながら訊ねられた。

杏菜の髪は、胸元の辺りまで長さがあるセミロングで、色はグレーとベージュをミックスしたグレージュに染めていたのだが、カラーはほとんど取れてしまっている。

「う〜ん……。髪の長さは整えるだけで大丈夫です。色はもうすぐ夏なので明るい感じがいいです」

「なるほど!じゃあ、髪の毛は伸びてるところを整えて、色は夏っぽくオレンジ系にしてみようか」

くすぐるように優しく凌に髪に触れられ、杏菜の胸がドキッと高鳴る。杏菜は「お願いします」と頷き、カットが始まった。

人の髪を整えて美しくしていく美容師は、まるで魔法使いのようだと髪に触れられるたびに杏菜は思ってしまう。

「今日も可愛くしていきますね!」

ニコリと笑った凌に、杏菜はドキドキしながら「楽しみです!」と笑う。凌は杏菜に魔法をかけて、変身させてくれた人なのだ。