5歳の時からずっと、大地くんに恋をしていた。

だけど、この想いが報われることはなくて。


高校1年生のバレンタイン、あたしはあたしのことを好きだと言ってくれたりっくんと、付き合うことにした。


りっくんはとても喜んでくれて。

それがあたしも嬉しくて。


少しずつでも大地くんのことは忘れて、あたしはりっくんだけを好きになる。



数日りっくんの『彼女』として過ごしながら、そう確信していた……はずなのに。




「──え?」


お昼休み。いつものように千明ちゃんと佳穂ちゃんとお弁当を食べて、そのままたわいのない話をしていた。

そんなあたしに、少し焦った様子でクラスメートが声をかけてきて。

続けられた言葉と、教室の引き戸の前に立った人の姿を見て、思わず声を漏らした。


「ひなちゃんっ、藤沢くんが呼んでる」


クラスメートの言葉の通り、そこに立ち、こっちに目を向けていたのは……大地くん。