君だけに捧ぐアンコール

 土日家事をこなし、月曜日からは普通に出社。一人暮らしをしていたアパートより会社から少し遠いし、なかなか思っていたよりもしんどい。

「なんか先輩今日つかれてません?」

 教育係の宮崎くんがめざとく私の疲れを察知してきた。彼は仕事はまずまずだが、人の機微を読むのはうまい。

「わかる?ちょっとプチ引っ越し?したんだけどさ~」

「え!なになに?彼氏と同棲ですか?結婚ですか!寿退職ですか?!」

「何の話よ。彼氏なんかいません!いりません!」

急に焦り出す宮崎くんに驚く。

「びっくりした~。俺、花音先輩が辞めちゃったら俺も辞めますからね!」

「それもどうかと思うけど。結婚しても辞めたくないし、結婚する相手もいないし、辞める予定はありませーん」

「はーよかったぁ~」

 心底安心した様子の宮崎君をみて、コイツにもっと仕事振ろうとその時決意した。
それにしてもこの土日、思い返せば腹が立つ出来事だらけだった。



 あの後帰宅した隆文さんによると、あの寝起き不機嫌男は加賀宮彗一(かがみやけいいち)というらしい。
ヨーロッパで活動していたが、日本での活動が増えてきたので日本に完全帰国することにしたそうだ。

 隆文さんの元教え子らしく、今回日本で落ち着くまではここで暮らすらしい。家政婦さん早く帰ってきてー!
 隆文さんと私、そして加賀宮さんの3人で暮らすことになったのだが──