「舞香ちゃん、調子はどう? 上手くいってる?」

「はい。圭吾にもみてもらって……」

 希先輩は首にかけていたカメラを外した。

それをテーブルに置いて……。

「あ、しま……」

「!!」

 人は本当に驚くと、声が出なくなるものらしい。

「ちょ……。ちょ! な……!」

 あぁ、恐れていたことがついに現実になってしまった。

俺は大きくため息をつく。

希先輩の言いたいことは、言えなくても分かる。

すやすやと眠るチビ龍が、希先輩に見えていることは間違いない。

舞香はそんな先輩を見上げた。

「え……。希先輩、ハクが見えるんですか?」

「ハク? ハクってなに?」

 チビはのんびり薄目を開けると、その小さな口で大あくびをした。

「なんだ。お前にも見えるのか」

「え? なに? 二人とも知り合い?」

 希先輩から交互に指をさされ、俺と舞香は顔を見合わせる。

「あぁ、そういうことになるのか」

「知り合い? ……。そっか、知り合いか」

 彼女の指は順番に俺たちを見回す。

「私と、圭吾と、ハクちゃんと」

「ハクちゃん?」

「舞香が名前をつけたの?」

 俺が聞いたら、代わりにチビが答えた。

「舞香が名付けをした。我が名は『ハク』となった」

「ちょっと! なんで今までこんなコト黙ってたのよ!」

「えっ?」

 俺はその声に振り返った。希先輩が身を乗り出す。

「私も混ぜて!」

「いいんですか!」

 舞香の目が、見たこともないくらいキラキラしている。