翌日の俺は、風邪をひいたフリをして学校を休む。

舞香を乗っ取った妖怪の類いが暴れ出し、校内でアクションホラー映画並の惨劇が発生する事態を考えての危機回避だ。

しかしながらそんな異次元的なことは一切起こることなく平和な時は流れ、週明けの月曜から、俺はビクビクしながら学校へと行くハメになってしまった。

なぜだ?

「ははは。お前、すんげー風邪ひいてたんだな。だからこのクソ寒い春先での外撮影なんて、やめとけっつったのに」

 同じ写真部の連中はそんな呑気なことを言って笑ってたけど、俺はこの学校のどこかに幽霊だか妖怪だかに取り憑かれた生徒がいるのかと思うと、それだけで気が気ではない。

記録の代わりに残した画像もすぐに見ることは出来なくて、その「星空」フォルダーはいつまでもパソコンの中に放置されていた。

忘れたくても忘れられず、かといって誰かに話すことも出来ないまま、また一日が過ぎる。

登校するのがこんなサバイバルになるだなんて、思いもしなかった。

「圭吾、タイムラインに載せる画像早く選べよ」

「うん、ちょっと待って」

 新入生勧誘のために、部員の撮影した画像を学校専用SNSにあげるべく、俺は何十枚も撮った中から最高の一枚を選んでいた。

同じ部員である山本はPC画面をのぞき込む。

「圭吾もさぁ、諦めて加工すればいいのに。今時当たり前だよ」

 ボウズスタイルのいわゆる丸刈り坊主頭ではない、似合ってるのか似合ってないのかよく分からない頭をした山本は、その頭を掻いた。

「俺はそれがイヤなの」

「コレだってさぁ、いい写真なのに、ここに余計なものが入ってる」

 校舎を下から見上げるように撮影した写真だ。

そこに入り込んだ人物が、真正面でこっちを向いてしまっている。

「これを消しちゃえば、それなりに使えるのにさ」

「しょうがないだろ。シャッター切った瞬間カーテン開けられたんだから。そんな偶然に撮れたものに、いいのがあったりするんだよ」

「そうかもしれないけど、このままだとほとんどがゴミじゃん」

 そんなことは言われなくても分かってるけど! 

色のコントラストだって、変えた方が確かに綺麗だし映えるけど! 

俺は自分の目で見たものを見たままで写し取りたい。

そう思っているから、出来るだけ加工はしたくないんだ。