「お前、名前なんていうの」

 なんかヘンなものかと思ってたら、やっぱり悪い奴ではなさそうだ。

龍といえば悪いものでもないだろ。

腕を伸ばしたら、その手にガブリとかみつかれた。

「痛った!」

「気安く触れるでない!」

「何だよ、突然噛むなよ!」

「無礼者め、そこから動くな」

 そんなことを言われたって、どうしろってんだ。

噛まれた手を見る。

血は出てないし、甘噛みだ。

舞香はめちゃくちゃ驚いている。

「圭吾、本当に知ってたの?」

「う、うん……。池の上から降りてきて、すぐに取り憑くところを見ちゃった……」

 チビ龍と彼女は息を揃え、盛大にため息をつく。

「だから、そういうことはもっと早く言ってくんないと!」

「私も知らなかったのだ。仕方ないだろう」

「どうしてそんなにマヌケなの!」

「間抜けとはなんだ、舞香よりはるかにマシだ」

 一人と一匹はにらみ合っていたかと思うと、また同時にため息をつく。

「えぇっと……、いまはどういう状況?」

 三人はそれぞれに目を合わせた。

それを聞かないことには、俺だってどうしようもない。

夕闇に沈む公園で、またため息をつく。

彼女とチビ龍の出会いは知っている。

問題はそれ以降と、これからのことだ。

「あの池をね、作ったのはこの人なんだって」

「ヒト呼ばわりするな。お前たちとは生きている次元が違う」

 要約すると、宝玉を隠すために天界から地上に降り、地面に隠したのはいいんだけど、その後どこに行ったのか分からなくなったんだって。

「行方不明なのだ」

「なくしちゃったから、探してほしいんだって」

「それはいつごろ隠したの?」

「1,200年前」

 平然とそう言ってのけるチビ龍を俺は見つめた。

舞香もそれが当たり前のように突っ立っている。

「あぁ、そりゃ大変だな」

 なんだよそれ。

やっぱり関わるんじゃなかった。