「な、なんか、ゴメン……ね?」

「別にいいよ」

 いまだかつてない緊張感だ。

校舎の外に出る。

空は真っ赤に燃え上がっていた。

このまま山道を下っても、その先にはコンビニの駐車場しかない。

そんなところで話しをするわけにもいかないだろう。

同じ学校の生徒の目がつきすぎる。

「どっか場所変える?」

「そうだね。あ、コンビニの交差点を渡った向こうに、小さな公園があるの。そこでもいいかな」

 なんか素直に従っている風に見えるけど、俺は別に元からキミに興味があったワケではないから。

そんなの、何にもないから。

信号を渡った先には、確かに公園があった。

誰が何のために作ったか分からないような、米粒みたいに小さな公園だ。

外灯が一本とブランコが一つに、おまけみたいなベンチが添えられている。

夜の訪れと同時に、その古びた外灯に灯りがついた。

周囲からの喧噪は響いてくるのに、この公園だけは恐ろしいほど静かだ。

二人きりになるのがこんなにも緊張するものだなんて、思わなかった。

肩までの髪が振り返る。

「あ、あのね。驚かないで聞いてくれる?」

「うん」

「あ、あのね……」

 覚悟は出来てる。

俺は浮気するような奴じゃないし、キミの門限もしっかり守る。

嫌がるようなことは決してしないし、わがままだって言わない。

こうみえて結構尽くすタイプだと思うよ。

「本当に、びっくりしないでね……」

「分かった」

 たとえなにがあったとしても、受け入れる用意はある。

俺と彼女の間にあった空間が、ぐにゃりと歪んだ。

それはゆっくりと渦を巻きながら次第に紐状に形作られたかと思うと、真っ白な龍の姿へと変化する。

「久しいな、圭吾」

 半透明に透ける白い龍はそう言った。

長さは60cmといったところだろうか。

顎髭を伸ばし、二本の角とたてがみをなびかせるその姿は、日本の昔話に出てくるよく知った龍の姿そのまんまだ。

「なんだよ、そっちかぁ~……」

 全身の力がガックリと抜け落ちる。

それならそうと最初に言っておいてほしかった。

なんだ。

なんだよ。

緊張して損した。

目の前の龍は、ぷかぷかと浮いている。