ママの手料理 Ⅱ

「な、何をされているのですか!食べかけではありませんか、私は要りませんよ!」


案の定、笑われた。



0823番が昼食を持って外に出てしまった後、私はぼんやりとスマホの画面を見つめていた。


(この花の名前は紫苑、君を忘れない、カメラ…)


どれも、0823番に教わるまで知らなかったものばかりだ。


それなのに。


(何で、電話は知ってたんだろう…)


今の時代、スマホだけでなく固定電話でも電話をする事が可能で、無線機を使っても遠くの人とやり取りする事が出来る。


だから、小さい時に友達と遊びたかった時は、親に内緒で家の固定電話から友達に電話をかけた事もあった。


(…って、え?)


回らない頭で考え事をしていた私は、思わずぽかんと口を開けた。


今のは何の記憶だろう。


(小さい時に、友達に電話…?固定電話?何それ、…待って、親って何?大叔母さんじゃないの?)


使う機会がなくて萎んでしまった脳みそに、たちまち疑問が溢れかえる。


(そういえば、何処かの部屋のサキって人はお父さんとお母さんがどうこうって…。じゃあ、私にも親がいるの?)


ぎゅっと目を瞑り、私は必死で記憶の糸を辿って行った。