「……夕飯のお時間です」


0823番の声が聞こえ、私はお盆を持って入ってきた0823番の姿をぼんやりと見つめていた。


この頃、寝ても醒めても夢の中にいるような気分で、彼女が入ってくるまで外が暗くなっていることすら気付かなかった。


「今日の献立は、ロールパンが2つとコーンスープ、飴玉が2つです」


機械のように献立を読み上げる彼女は、どこかそわそわしている様で。


「ありがとう、0823番。一緒に食べよう」


そう言った私がコーンスープに口をつけても尚、彼女は自分の硬い食パンを持たずに何かを言うタイミングを計らっているようだった。



「……どうしたの、何で食べないの?」


数分後、次はロールパンをその中に浸して食べ始めた私は、とうとう我慢できずに口を開いた。



「……あの、私、」


数秒後、意を決した表情でそう切り出した彼女の声は、消え入りそうだった。


「…私、0114番様の為に持ってきたものがあるんです。見せてもよろしいでしょうか」


(…え、私に?)


驚いた私は、一旦食べる手を止めてお盆を横にずらした。


「こちらなのですが……」


しきりにドアの方を気にしながら彼女がおずおずと差し出したのは、黒い長方形の物体だった。