ママの手料理 Ⅱ

彼女の蝶の柄のついた長めのネイルが揺れ動き、何とも言い難い甘ったるい香水の香りが鼻をつく。


(この香水の匂い強すぎてくっさ、)


と思っても決して顔にも口にも出さず、私は、


「ありがとうございます、大叔母さん…」


と、代わりに感謝の言葉を口にした。


それでいいのよ、と言いたげに満足そうに微笑んだ大叔母さんは、


「また後で様子を見に来るから、しっかり栄養補給はしておきなさいね。あと、飴をなめるのも忘れずに」


と言い残し、風のような速さで部屋を出て行った。



大叔母さんが出て行った後、


「それでは0114番様、お食事の時間です。…それと、私も今日はここで食事をさせて頂いてもよろしいでしょうか、?」


お盆を私の布団の横に置いた彼女の控えめな声で、私は我に返った。


「あ、うん。もちろん!」


頷いてそう言うと、彼女は、


「痛み入ります」


と、軽く礼をして微笑んだ。


(その言葉、どこかで……)


聞き覚えがある言葉だな、と思ったけれど、それ以上考えるとまた頭痛が悪化しそうな気がした私は考える事を止め、静かにお粥を口に運んだ。


0823番は私の隣で、いかにも硬そうなパンを悪戦苦闘しながらかじっていた。