ママの手料理 Ⅱ

ああ駄目だ、何があっても余計な事は考えるな。


38度付近をさ迷っている熱が下がってくれれば、この頭痛ともおさらばするはずだ。


「……早く下がってよもう…」


思わず熱に対する悪態をつきながら、私は頭を押さえる手の力を緩めずにその場に縮こまった。



それから、どのくらい時間が経っただろう。


「イイヨちゃーん、調子はどうー?」


朝でも夜でも元気はつらつな女性の声で、私は目を開けた。


「あ、…大叔母さん、」


ハイヒールの音を響かせながら私の部屋に入ってきた大叔母さんは、躊躇せず私の額に自分の手を乗せた。


彼女のひんやりとした手が気持ち良い。


「まだ熱があるみたい。…0823番、食事を出してあげて」


「かしこまりました、仰せのままに」


大叔母さんの後ろからお盆を持って現れた0823番は、どことなく緊張しているようだった。


「…大叔母さん、熱が下がらなくてごめんなさい」


謝罪の言葉を口にすると、


「なーに言ってるのよイイヨちゃん!この頃授業と実習が積み重なってて疲れていたもの、仕方がないわ!熱が下がったらまた今まで通りに出来るんだから、まずはゆっくり身体を休めなさい。ね?」


黒に銀のスパンコールを散りばめたワンピースに黒くてふわふわのコートを羽織った彼女は、目の前でぶんぶんと手を振った。