ママの手料理 Ⅱ

そうこうしている内に日が暮れ、手の届かないところにある小さな窓を覆ったボロボロのカーテンの向こう側は闇に包まれてしまった。



夜は嫌いだ。


何かを思い出そうとすると頭が痛くなるからあまり考えたくないけれど、夜はとても寒くて怖くて、とにかく嫌な感じしかしない。


そもそも夜は幽霊やお化けが出てきそうだし、小さな頃は誰かと一緒じゃないとトイレにも行けなかった気が……。


「いっ……!?もう何なのこれ、痛いってば、!」


小さな頃の事を考えたせいで頭を鈍器で殴られたかのような痛みに襲われ、私はまた布団の上でうずくまった。


じっとしているかあの飴玉を舐めれば症状が緩和するのが分かっているから、取り敢えずゆっくり呼吸をすることだけに専念する。


(落ち着いて考え事も出来ないっていうの…?0823番と受けた授業の内容だって全然思い出せないし、しかもいつになったら熱下がるの…、)


とにかく、過去の事を考えてはいけない。


0823番との思い出や、大叔母さんとの事を考える分には頭は痛まないけれど、どうもそれ以外の事を考えるのが駄目なようだ。


例えば、私は生まれた時から大叔母さんに育てられたらしいけれど、なら私の両親は何処にいるのだろう…、とか。


「いったいなあ!?」


思わず叫んでしまった私は、慌てて布団で自分の口を塞いだ。