ママの手料理 Ⅱ

ああ、どんなウイルスにやられたらこんなに記憶が曖昧になってしまうのだろう。


悲しそうな笑みを浮かべて話し続ける彼女を見ていると、何だかいたたまれない気持ちになってきた。


彼女の話では私達はとても仲が良かったはずなのに、いきなり私がこんな風になってしまって彼女が1番混乱しているだろうに。


「体調が良くなりましたら、また、優秀な下僕になる為の授業を受けましょう」


そう提案してくれる彼女に、私は笑って頷いた。


早く熱が下がれば、私はまた0823番と一緒に授業も受けられるし、たまに悪い事をして大叔母さんに叱られながらも成長して、そうしたら私は、


(1人前の、下僕に……)


「!…私、1人前の下僕になるんだよね!?」


急に頭の中に浮かんだその言葉を、私は興奮気味に彼女にぶつける。


「思い出したの!私、1人前の下僕になる為にここに居るんだよね!?だから、もう下僕のはずの0823番も一緒に授業を受けてくれてたんだよね?私が分からない所、教えてくれてたよね?」


そうだよね!?、と、笑顔になる私を、彼女は驚いた様に目を見開いて見つめ。


「…その通りです、0114番様。この調子でいくと、すぐに記憶を取り戻しますね」


目を潤ませながら、何度も小刻みに頷いた。