ママの手料理 Ⅱ

私のいる部屋は6畳もないほどの狭さで、あるものは薄い布団と硬い枕と、まあまあ暖を取れる毛布、それとクローゼットのみ。


(クローゼット、……)


その大きく四角い箱に、何かの違和感を抱くけれど。


「いったあ、!?」


突如私の頭を襲った激痛に、私はその場を蛇のようにのたうち回った。


「0114番様!?どうなさいましたか!?」


のたうち回っている間に硬い床に膝でもぶつけたのか、その大きな音で0823番が焦った様な声を出しながら駆け寄って来たのが分かった。


「大丈夫です、私の手を握って下さい!こちらの飴を舐めて下さい、すぐに頭の痛みは収まりますから!」


彼女が私の口を強制的に開け、小さくて丸いものを入れた。


「…もう少しで効き始めるはずです。大丈夫です」


0823番の手を握り締めながら激しい頭痛と闘っていた私の舌を、甘い飴が転がる。


(…あ、いちご味だ)


飴の味を感知した瞬間頭がぼーっとしてきて、まるで浮遊しているような感覚に襲われる。


「あ、……治った、…ごめんなさい、手が、」


いつの間にか頭痛は消え失せ、私は渾身の力で握り締めていた彼女の手を離した。


「いえ、差し支えありません。…それでは0114番様、記憶を取り戻す為にしばらくお話をさせて頂きますね」