ママの手料理 Ⅱ

次に私が目を開けたのは、何と翌朝だった。


昨夜、夕飯もお風呂にも入らずに眠ってしまったせいで身体は汗ばんでいるしお腹も空いている。


「うーわ最悪、シャワー浴びなきゃ…」


完全に記憶が戻った私は、誘拐される前のように大きな足音を響かせながら階段を降り、そのまま真っ直ぐ脱衣所へと突入した。


と。


「え、何!?ノックしてよ!」


そこには、洗顔真っ最中の仁さんの姿があった。


泡で真っ白な顔になりながら私に喝を飛ばす姿は何だか奇妙で面白い。


「あ、ごめんなさい。…てか今のはドア開けっ放しでやってたそっちが悪いですよね?」


「いーやいやいや、僕のせいだって言うの?信じられないね紫苑ちゃん、僕は信じないよ!」


含み笑いを浮かべながら前までのように軽く突っかかると、周囲に泡を飛ばしながら拒否された。


これでも本当に成人済みの大人なのか、有り得ない。


「大人気ない…」


思わずそう呟くと、


「ぬぁ!?今何て言ったねえ、誰が大人気ないって!?もう1回言ってみ」


黄金比顔が分かりやすく歪んだ。


「もう、早く洗顔終わらせてください。私朝シャンしたいんです」


取り敢えず早くシャワーを浴びたい私は、自分の手首に付いていたリストバンドを返した後に彼を洗面所から追い出し。


至福のひとときをお風呂場の中で過ごす事に成功した。