ママの手料理 Ⅱ

たった2ヶ月前までは居なかったはずの存在が、今では1日行方をくらましただけで心配になってしまう程。


俺達にとって、いつの間にか彼女は欠かせない存在になっていた。



「ってか、紫苑ちゃん帰って来てくれないとレジ打ちする人いないし…。銀子ちゃんが代わりにやってくれれば1番いいんだけどなぁ、」


わざとらしくため息をつき、朝ご飯を食べ終わった俺は立ち上がる。


「ごちそうさま。んじゃ、今日のレジ打ちよろしく」


最も、お盆を持って廊下に出た俺の背中に、


「お前パンのカスベッドに零しまくりじゃねーかよ!許さねぇ、3回死ねこのクズ野郎!金輪際部屋に入れねぇからな死ね!」


と、耳を塞ぎたくなる程の銀子ちゃんの怒り狂った大声がぶつけられたのだけれど。



結局、時短営業のママの手料理では俺が渋々レジ打ちを担当し。


魂の抜けたような顔をした湊が帰ってきたのは、俺がバイトに行く数十分前だった。


「…捜索願い、出してきた……疲れた…」


お店のドアを開けてふらふらと店内に入ってきた彼は、カウンター席に腰を下ろしてテーブルに肘をつけた。


「お疲れ…」


まさかこんな状態で湊が帰宅すると思わなかった俺は、内心衝撃を受けながらも労いの言葉をかけた。