ママの手料理 Ⅱ

琥珀と口をきくだけでふわふわとした気分になる俺に、


「いや…チビがまだ帰って来ねぇから、これから湊と一緒に署に行ってくる」


彼は、耳を疑いたくなる一言を投下した。


「嘘……」


さすがにもう帰ってきていると思っていた俺は、思わずその場に立ち止まってしまって。


(迷子?誘拐?家出?…いや、普通に考えて家出だよなぁ)


傍から見ても分かる程しゅんとしてしまった俺をみた琥珀は、ふっと笑った。


「大丈夫だ、チビなら心配いらない。…あと、1階で湊がまだ寝てるから起こすなよ。食事は自分の部屋でしろ」


琥珀が大丈夫と言ったら、本当に大丈夫な気がしてくるから不思議だ。


「分かった、」


頷く俺を見た彼は満足そうに頷き、伸びをしながら自室へ入ってしまった。



リビングでは、湊が昨日と同じ体制のまま静かに眠っていた。


台所では、笑美が音を立てないように全神経を集中させて掃除をしていて。


「笑美、おはよう。何か食べるものある?」


と、ほとんど声を出さずに身振り手振りで伝えると。


「おはようございます。大也様の分はこちらになります」


ぴんと背筋を正した彼女は、朝ご飯の残りと思われる料理をお盆に乗せて渡してくれた。


「今日は“ママの手料理”は昼過ぎからの時短営業となるそうです。よろしくお願い致します」