「おはよう、大也。君が昨日居なくなった後に紫苑から色々聞いたんだけどね…」


皆と同じようにヨーグルトを手にしてテーブルにつくと、それを待ち構えていたかのように湊が昨夜の出来事を話してくれて。


俺が昨日家を飛び出して行った事など気にしていないような素振りに、俺は内心安心しながら彼の話を聞いていた。


ここで俺に対して変な態度を取らない彼らは、本当に俺の事を良く分かっているなと思う。



「なるほどねぇー」


俺が出て行った後に紫苑ちゃんが話してくれた事を聞き、俺は神妙な顔をして唇をすぼめた。


「つまり、その飴から何かの薬の成分が出たら、今度はそれを分解させる薬を作って紫苑ちゃんに飲ませればいいってことでしょ?」


彼らが俺に伝えた事を簡潔にまとめて確認すると、


「要はそういうことなんだが、口で言うのは簡単でも実行するのはかなりの労力が要る。飴の中に含まれてる成分が麻薬や違法薬物の類なら話は厄介になってくるし、解毒薬の製造方法も複雑になるな」


銀子ちゃんが頷きつつ、現実味を帯びた発言をした。


「でも、解毒薬がなくても記憶が戻る可能性も無くはないよね?」


「ゼロじゃない。…あいつに記憶を蘇らせる程の何か大きなショックを与えれば、記憶が断片的にでも戻る可能性はあるが……難しいな」