ママの手料理 Ⅱ

彼は、自分で言いながら大きく頷いた。


「元々紫苑さんは此処に住んでいたんですから。安心してください、すぐに慣れますよ」



ずっと昔、同じような事を誰かに言われた気がする。



そう考えながら、私は雨の止んだ目を何度か瞬かせて笑った。



「ありがとう、航海」



瞬間、サングラス男ー航海ーは驚いたように口を開けて。


「…どういたしまして」


機械仕掛けのロボットの様に、ゆっくりと口角を上げた。



「入りまーす。もう泣き止んだかな?」


航海と入れ違いに私の部屋に侵入してきたのは、あの黄金比男だった。


「え、何でこんなにティッシュだらけなの?ゴミ箱は?あるじゃんほら捨てようよ」


私の部屋に入るなりベッドに置かれた使用済みティッシュに目をつけた彼は、汚いとか何とか言いながらもそれらをゴミ箱に捨ててくれた。


「…どうしたんですか?」


頼んでもいないのに、掃除に来てくれたのだろうか。


ベッドに腰かけたままそっと尋ねると、


「ああそうだった、紫苑ちゃんにこれを渡しに来たの」


彼は傍にあった椅子に座りながら、あるものを渡してきた。


「これ…リストバンドですか?」


「そう。もし嫌じゃないなら貸してあげようかなと思って」


手に乗せられたのは、ピンク色のリストバンドだった。