ママの手料理 Ⅱ

「両親…あいつらにはクソ程嫌な事をされたので今でも全部覚えてます。僕もずっと監禁されてましたし」


両親を殺して此処に来た、という経緯の話に未だ動揺を隠せない私を見て、彼はぎこちなく笑いながら自身の袖を捲った。


(っ…!)


顕になったのは、彼の左手首に付いた太長い古傷。


「これ、手錠の痕です。僕も手錠でテーブルと繋がれてました。全身縄でぐるぐる巻きで、正直死ぬかと思いましたね」


サングラス男は見た目は淡々と話し続けているけれど、実際のところは怒り狂っているのだろう。


声が若干震えている所や手を白くなるまで握り締めているのを見るからに、私の何倍も酷い思いをしてきた事が容易に想像出来る。



「…紫苑さん、負けないで下さい」


不意に聞こえた優しい響きに私が顔を上げると、サングラス男がこちらをじっと見つめていた。


その目はもう怨念に満ち溢れていなくて、ただ静かに私だけを映している。


「僕も洗脳されてたので言えますが、…その呪いは、必ず解けます」


洗脳を呪いと言い換えた事により、事の重大さがひしひしと伝わってくる。


「僕達も、紫苑さんの記憶が元に戻るようにお手伝いします。…今は何も覚えていなくて、単なる男集団の家に居て気まずいかもしれませんが、大丈夫です」