ママの手料理 Ⅱ

「…ああ、0823番って下僕の子だよね?あの子、染井佳乃…君の言う大叔母さんに撃たれて死んだよ。因みにその染井佳乃は、その子がナイフで殺したよ」


ようやく倒れた椅子を元に戻して腰を下ろした黄金比男が、爆弾発言を投下したのは。


「…え?」


「ちょっと、デリカシーのない言動は控えて」


湊さんの言葉も耳に入ってこない。


「あの時、下の階でバンバンいってたの聞こえなかった?あれ全部、染井佳乃と下僕の銃の音だよ」



そうだ、あの時確かに階下がうるさかったのは覚えている。


でも、あの時は誰かが暴れているくらいにしか捉えていなくて。


そこで鮮明に思い出すのは、大也さんに抱えられながら通った家の中。


血のような鉄のような強烈な臭いが充満していて、私は堪らずに鼻をつまんだのだ。


(っ……)


余計な事を考えると吐き気が込み上げてきそうで、何とか思考を停止させる。



「…紫苑ちゃんはその大叔母さんと家族だって言ってるけどさ、家族って簡単に殺し合いするものなの?」


黄金比男の顔が、醜く歪んだ。


「染井佳乃の言う家族は絵空事と同じだよ。彼女は多分、偽物の家族っていうグループの頂点に立つことで自分の存在意義を確立していたんだろうね。…でも、家族ってそんな生ぬるい関係じゃないから」