ママの手料理 Ⅱ

それなのに、俺はこんな所で何をしているんだ。


情けないのは俺が誰よりも分かっている。


肝心な時に逃げてばかりで、誰の言葉も真剣に受け取れなくて冗談ぽく笑って受け流すくせに、自分で抱えた問題は誰にも相談出来ずにいつまでもうじうじ悩んで。


変わりたいと思っていたのに、それを諦めたのはいつからだろうか。



「……っ、うあぁっ………」


公園に着き、いつもの定位置であるブランコに腰掛けた俺は、漕ぐこともせずにただ両手に顔を埋めた。


(ごめんね紫苑ちゃん、あんな反応させてごめん……!もうこんな話しないから、お願いだから元に戻って、)


考えるのは記憶を失った紫苑ちゃんの事と、


(ごめんね琥珀、こんな馬鹿にいつまでも想われてて迷惑だよね…。ごめん、本当にごめん)


いつまでも愛すると決めた、琥珀の事だった。





それから、どれ程時間が経っただろうか。


泣き疲れた俺は、一旦考えるのを止めて静かにブランコを漕いでいた。


5月のくせに冷たい空気が身体をすり抜け、少し寒いけれど頭を冷やすには丁度良い。


スマホはmirageからの通知でずっと震えているけれど、それを確認する気にもなれなかった。



と。







「おい、大也」