ママの手料理 Ⅱ

琥珀という人は、あの殺気男のことだ。


「琥珀、って…この人、?…好き?」



だからつまり、この人は何を言っている?


大也さんが殺気男の事が好き…恋愛的な好きという事で間違いないだろうか。


(それって……何それ、気持ち悪い)





気持ち悪い。





1度殺気男の方を見た私がまた大也さんの方を見直すと、彼は、


「っ……!?」


何かに気付いてしまったのか、息を飲んだ。



そのまま驚いた様に私の事を見ていた彼の目から、雨が一滴テーブルに落ちた。


え、と思ったのもつかの間、


「っ、ごめん…ちょっと外行ってくる!」


誰が見ても分かる程不器用な笑顔を作った彼は、私達に手を振って小走りにリビングを出て行ってしまった。


「何処に行くんですか!」


サングラス男の声だけが、リビングに反響して消えた。








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(やばい……どうしようどうしよう、俺なんて事言っちゃったんだろ…。今すぐ死にたい埋まりたい身投げしたい、)


熱くなってきた目頭をそのままに、俺ー伊藤 大也ーは街灯も役に立たない程暗い夜道を走り続けていた。


何故こんな事になったのか、理由は簡単。