ママの手料理 Ⅱ

「え、…私と、あなた達が、家族……?」


(どこをどうしたら私達が家族になるの?ほぼ男しかいないじゃんこの家!)


顎がもげそうな程口を開けて固まった私を見て、


「え、どういう心境でそんなに口開けてるの?一体君は何処まで忘れてるのさ」


あれからずっと立ち続けている黄金比男が、大袈裟に手で顔を覆った。


「…ねえ、自分のお父さんとお母さんの事は覚えてる?兄弟の事とか、あと…怪盗OASISの事とかは?」


そんな中、隣から真剣な声が聞こえてきて、私は首を傾げた。


「……怪盗OASISって何ですか?」



彼らは、私の事を誰かと勘違いしているのではないだろうか。


私の返答を聞いた大也さんが、下唇を噛んだのが分かった。


「うっそ…じゃあタピオカは?」


「分かります。タピオカミルクティーMサイズ」


「紫苑ちゃんはそのタピオカを此処で飲んでたんだけど、覚えてない?」


私は、眉をひそめながら首を横に振った。


何せ、あの飴を舐め始めてからというもの自分の記憶に自信がないのだ。



「…じゃあ、伊織の事は?荒川次郎は?一緒にママの手料理でレジ打ち頑張ったのは?マカロン食べたりテレビ観たりして、笑いあったあの日々は!?」


質問を投げかける彼の声が段々と大きくなり、彼はしまいにはテーブルを手で叩いた。