ママの手料理 Ⅱ

彼らが話しているのは私の事のはずなのに、まるで実感が湧かない。


洗脳だの記憶喪失だの、私の前で混乱させるような事を言わないでもらいたい。


私は生まれた時から大叔母さんの家で育って、そんな私の世話をしてくれたのは0823番。


何故か頭の片隅にあった数列に電話してみたら偶然外の世界と繋がって、何故か目を瞑らされて変な臭いのする中を通って、車に乗せられて眠って、此処に居るだけ。


そもそも私が外の世界に助けを求めた目的を、この人達は理解しているのだろうか。


(…違う、私が最初にその説明をしたらこの人達が“洗脳”だの“記憶喪失”だのって言い始めたんだ)



仮に私が記憶喪失で洗脳されているとして、ならこの人達は私の何なのだろうか。


こんな人達は私の記憶に存在していないし、そもそも0823番が言っていた事が否定された今、何が本当で何が嘘なのか分かる術がない。



｢あの、あなた達は、私の何なんでしょうか…？｣


再び良く分からない論争が始まった男性達に割って入るように、恐る恐る口を開くと。


｢紫苑さんは、僕達の家族ですよ…ね、？｣


サングラス男が当たり前だと言いたげな口調で答え、最後は不安になったのか周りを見渡した。


それにつられて私も周りを見ると、全員がこくこくと頷いていて。