ママの手料理 Ⅱ

今まで一言も発さずに私達を傍観していた女性が驚いたような声を上げ、


｢あーっ、それ他の下僕達も付けてたよね？ほら、染井佳乃に立ち向かって行った子達！｣


大也さんは、見知らぬ人の名前を出しながらまた大声を上げた。


(えっ…？)


ぽかんと口を開けた私に、


｢…あの、いきなり口を挟んでしまい申し訳ありません。ですが、一言申し上げたい事があります｣


女性の震える声が聞こえてきた。


良いよ、という湊さんの声を聞いた彼女は、安心したように口を開いて。


｢まず紫苑様にお伝えしておきますが、私は0823番と同じく下僕です。…それで、私達下僕はご主人様に買われるまで外の世界に行く事は許されません。…ですので、紫苑様の仰った“0823番と抜け出して買い物に行った”は虚言かと｣


｢ち、違いますよ！0823番が何も覚えてなかった私に教えてくれたんです！私達は一緒に買い物に行って、髪飾りとスマホをお揃いで買ったんだって！｣


ああこの人も下僕なんだー、なんて呑気に感心している暇はない。


思わず反論してしまった私に、彼女は申し訳なさそうな顔をして微笑んだ。


｢…それは、0823番が貴方様を洗脳させる為についた嘘だと思われます。下僕にはスマホなんて与えられませんし、そもそもその髪飾りは、｣


そこで一呼吸置いた彼女は、真っ直ぐに私の目を見て口を開いた。