ママの手料理 Ⅱ

『でも…このまま見捨てておくんですか?皆食事も与えられなくて、洗脳されたままで…餓死する未来しかないですよ!』



航海の意見は実に的を射ている。


俺だって、助けられるものなら全員助けたい。


けれどまたあの血の海を見るのはどうしても耐えられないし、今は紫苑ちゃんのケアも必要だ。


諦めよう、航海。


俺が、そう言おうと口を開いた瞬間。



『…銀河、今すぐお前の居る場所の地図を俺に送れ』


自分に言われているわけではないと分かっていても、心拍数が一気に上昇するのが分かった。


『俺が、いち警察官として現場に応援を送る。下僕養成所の奴らはどうなるか分からねぇが、そのオンボロ校舎に居る奴だけでも助かるだろ』


(え、琥珀考える事が天才過ぎない?一石二鳥みたいな考えじゃん、まじ心から愛してるわほんとに)


彼の顔が見えなくても分かる。


今の琥珀は、絶対にドヤ顔をしている!


そしてその言葉を聞いている俺は、絶対に目も向けられない程にやけている!



『…ありがとうございます、琥珀さん!』


航海の上ずった声が聞こえてきた所で、俺達は無線機の電源を落とした。



「…よし、琥珀にも地図を送ったから帰るか。お前ら全員お疲れさん」


ようやく車が出発し、その瞬間俺は恐ろしい程の疲労感に襲われた。