「うっそお」


俺は、思わず声を出して彼の手からそのストラップを奪い取った。


俺がこれを拾った時はあまり確認していなかったけれど、確かに紐の部分はまるでスマホから無理やり引きちぎったかのように切られていた。


「このGPSは、落とした後に通行人に踏まれたとか…?」


どことなく汚れた色のそれを弄り回し、最終的には湊の手に乗せ直した俺が呟くと。


「その可能性はある…けど、何でここの紐が切れてるのかは理解不能だね。物を大切にするあの子はどれだけ急いでてもこんな真似はしないだろうし、ストラップが何処かに挟まって切れた、みたいなちぎれ方じゃないしねこれ」


うーん…、と、腕組みをしながら仁が付け加えた。


そのストラップはまるで、誰かが必死でスマホからそれを取り外したくて思いっ切り引っ張った様なちぎれ方をしていた。



そもそも、どうしてこんなに彼らが人が少し居なくなっただけで大騒ぎするかには理由がある。


俺達は個々で職を持っているけれど、実際は怪盗mirageとして活動している。


その事実はもちろん口外禁止だし、俺達は決して単独行動で物を盗む様な真似はしない。


しかし、この隠された事実をメンバーが警察などにリークしてしまった暁には、全員逮捕、なんなら終身刑の未来が待っているわけで。