ママの手料理 Ⅱ




その体勢で数秒間目を閉じていた仁が、ゆっくりと目を開いた。


「…これか」


その口から漏れ出た低くて凄みのある声は、明らかに壱のもの。


俺が何かを言うよりも早く、双子の弟はふんっと手錠を持つ手に力を込めた。


瞬く間に壱の手が白くなって震えていく。


手錠が彼の馬鹿力で破壊されたのは、それから間もなくの出来事だった。



「これでいいな」


綺麗に半分に割れた手錠を見つめ、壱が満足そうに口を開いた。


(よし!このまま壱で居てくれ!)


ここぞとばかりにほくそ笑んだ俺は、かなりのハイテンションで口を開いた。


「ありがとう壱!超絶助かった!どうせなら壱のままで居てくれたら死ぬほど嬉し」


「……ああ、戻っちゃったみたいだね」


しかし。


立ち上がって首を回していた壱は、いつの間にか仁に人格交代してしまっていた。


「チッ………」


そちらに向かって怒りを込めて舌打ちをした俺は、次の瞬間笑顔で紫苑ちゃんの方に向き直り。


「逃げよう、紫苑ちゃん。早く行きたいから抱っこするよ!ああごめんねこんな格好で、帰ったらシャワー浴びれるから!」


有無を言わさず、彼女をお姫様抱っこした。


(軽っ!)


瞬間、まるで空の段ボール箱を持ち上げているかのような感覚に襲われる。


(足も手ももやしじゃん…骨の感覚分かるもん、一体何食べてたの?)