その体勢で数秒間目を閉じていた仁が、ゆっくりと目を開いた。
「…これか」
その口から漏れ出た低くて凄みのある声は、明らかに壱のもの。
俺が何かを言うよりも早く、双子の弟はふんっと手錠を持つ手に力を込めた。
瞬く間に壱の手が白くなって震えていく。
手錠が彼の馬鹿力で破壊されたのは、それから間もなくの出来事だった。
「これでいいな」
綺麗に半分に割れた手錠を見つめ、壱が満足そうに口を開いた。
(よし!このまま壱で居てくれ!)
ここぞとばかりにほくそ笑んだ俺は、かなりのハイテンションで口を開いた。
「ありがとう壱!超絶助かった!どうせなら壱のままで居てくれたら死ぬほど嬉し」
「……ああ、戻っちゃったみたいだね」
しかし。
立ち上がって首を回していた壱は、いつの間にか仁に人格交代してしまっていた。
「チッ………」
そちらに向かって怒りを込めて舌打ちをした俺は、次の瞬間笑顔で紫苑ちゃんの方に向き直り。
「逃げよう、紫苑ちゃん。早く行きたいから抱っこするよ!ああごめんねこんな格好で、帰ったらシャワー浴びれるから!」
有無を言わさず、彼女をお姫様抱っこした。
(軽っ!)
瞬間、まるで空の段ボール箱を持ち上げているかのような感覚に襲われる。
(足も手ももやしじゃん…骨の感覚分かるもん、一体何食べてたの?)



