ママの手料理 Ⅱ

まるで自分の事のように幸せそうに笑いながら、一筋の涙を零した。


(……え、)


しかし俺には、もう考える時間すら与えられなかった。



「生き残ったら、全員で陽の光を浴びましょう!………全員、構え!」


再び下僕達の方を向いた0823番は、大声をあげた。


もう、その言葉に迷いはなかった。


下僕達の棒のような足が一斉に動き、隙のない構えを取る。










「戦闘用意!……………始め!」











0823番が力を振り絞って叫んだ瞬間、大勢の下僕達が叫びながら染井佳乃に突進して行った。


銃声にスタンガンの音、叫び声、足音……。



目の前で繰り広げられている血の海の闘いに、俺は呆然と立ち尽くす事しか出来なくて。


顔も名前も知らない下僕達が血を流し、頭や手足を吹き飛ばされながらも染井佳乃に立ち向かっている。



「大也様、3階のNo.12の部屋に行ってください!ここは私達が命にかえて食い止めます!」


隣に立つ0823番は、口から血を流していた。


「だ、駄目だよそんなの…!皆死んじゃうって!早く止めさせてよこれ!」


俺がどんなに喚いても、彼女は笑うだけで戦闘を止めようとしない。


代わりに、彼女は俺に向かって深く深くお辞儀をした。


「0114番様を……紫苑様を、よろしくお願い致します」