ママの手料理 Ⅱ

俺達の事を何も知らないはずの下僕達が、一斉に頷く。


「だ、駄目だよ何してるの?そいつコートの下にめっちゃ銃隠し持ってるんだよ!?死んじゃう!」


全員で染井佳乃を止めようとしたところで、確実に死人が出る。


そんなの、自殺行為だ。


彼女達が今からしようとしている事がようやく分かった俺は、必死で0823番を止めようとした。


「…知っています。……私達には元から、人間としての価値なんてないんです。…パピヨン側の人間は既に全員倒しています…お2人はどうか安心して、0114番様の元に……」


それなのに、そこまで言い切った彼女は大きく息を吸って目の前に立つ下僕の方へ向き直って。


彼女達は間違いなく本気だ、今から死にに行くようなものなのに、俺達を護るように立ち塞がる下僕の少女達からは恐れが感じられない。


この状況を前にどうしたらいいか分からず、ただあたふたしていると。




『駄目、0823番!』



突如、イヤホンから笑美の泣き叫ぶ大声が鼓膜を揺らした。


その魂の叫びは仁の首からぶら下がったイヤホンを通して、0823番の耳にも届いたようで。


「笑美、…」


俺がぽつりと呟くと、0823番はゆっくりと顔を上げ。


「……0917番さん、怪盗mirage様の所に居たんですね…しかも、名前まで貰えてっ……」