ママの手料理 Ⅱ

「今こそ、私達下僕が力を出す時です!」


多量出血をしているにも関わらず、壁伝いにゆっくりと立ち上がった0823番が声を張り上げた。


「「「「「「「はい!」」」」」」」


俺達に背を向けた何十人もの下僕の声が、空気を揺らす。


よく目を凝らすと、彼女達はおたま、包丁、銃、フライパン等の武器ーと呼べるか分からないものも含まれているがーを手にしていて。


(何が起こるの…?)


どう考えても、この下僕達は怪盗パピヨン側だ。


ここからくるりと後ろを振り返って、俺と仁に攻撃してくる気ではないだろうか。


「ちょいちょいちょいやばいって…、行くよ仁」


大量の下僕が壁になり、染井佳乃の姿は目視できない。


取り敢えず上に行こう、そう思った俺の耳に、


「貴方達、…死ぬ気で染井佳乃に立ち向かいなさい!」


0823番の決意に満ちた大声が聞こえてきて。


(へ?)


思わず耳を疑った俺は、再び口を半開きに開く羽目になった。


『この方達、僕達の味方なんでしょうか?』


『さぁな…』


航海と琥珀が小声で話している。



「ご主人様を、ここから一歩も先に進ませてはいけません!」


そんな中、0823番の声だけが廊下に反響した。


「命を懸けて、この方達を護りましょう!……良いですね!?」