ママの手料理 Ⅱ

何せ、俺は今0823番の方を向いて彼女を庇うようにしゃがんでいて、後ろの状況がまるで分からないのだ。


俺が動いたら殺されるだろうし、今俺の隣で彫刻の様に立ったままの仁は役に立たない。


(銀子ちゃん何してるの…?助けに来てって言ったじゃん!)


ドローンが未だ空中で旋回しているのを見る限り、彼は車から1歩も外に出ていない。


(あのクソハッカーめ、今度毒盛ったワッフル食べさせてやる…!)


ハッカーに対して怒り心頭の俺がまた舌打ちをしたのと、


「…皆!」


俺の腕の中で、0823番が大声で叫んだのは同時の出来事だった。



「「「「「「「はい!」」」」」」」


その時、俺が向いている方向ー染井佳乃が立っているのとは逆の廊下ーから、大量の足音が聞こえてきて。


ダダダダダッ…と駆け足でこちらに近づき、染井佳乃と俺達の間に壁のようになって並んだ人達は、皆0823番と同じエプロンと蝶の髪飾りを身につけていた。


『…何これ?』


誰かの素っ頓狂な声がイヤホンから聞こえる。


そのくらい、俺にもこの状況が理解出来ていなくて。


「…どうなってるの、」


慌てて立ち上がった俺が仁の手を握り締め、ぽかんと口を開けていると。