ママの手料理 Ⅱ

「…大也様、私の事は構わず、どうか上へ……0114番様が、お待ちです、」


赤く染まった腹部を手で押さえながら、彼女は必死でそう訴えかけてくる。


『誰でしょうか、この方』


「行くよ、上に行くけど…君怪盗パピヨン側の子だよね?何で俺の名前知ってるの?何で紫苑ちゃんの事も知ってるの?」


怪我人相手に質問攻めにするのは良くないと分かっていても、思わず聞いてしまう。


染井佳乃はまだ動き出す気配がないから、今のうちだ。


「……0114番様が、貴方様の名前を仰っていたんです…彼女は、私が担当しておりまし…」


『…という事は、この子0823番?』


『この方はどちらの味方なんでしょうか』


少女ーいや、0823番の答えと共に、家に居るメンバーの声もイヤホンから聞こえてくる。


「……怪盗mirage様の事は、前々から存じ上げております……大也様、今すぐその方と上へお行き下さい、…0114番様はまだ間に合います、お願いします……」


(えっ、どういう事?)


最後の言葉の意味が分からず、俺がもう一度聞き返そうとした時。


遠くから、カチリと音がした。



『あ、染井佳乃さん復活ですね。今大也さんの方に銃向けてますよ。これは一大事です』


ふざけた航海の実況を聞いた俺は、大きく舌打ちをした。