ママの手料理 Ⅱ

｢何で湊さんが謝るんですか。僕はもう洗脳されてないんです。親も殺したし、此処に居るからもう大丈夫なんです。何も怖くないんです、首輪も付けてないし残飯を食べなくても済むし叩かれなくてもいいしだから全部全部平気なんです｣


息継ぎもしない最年少mirageの声に、俺は驚いて顔を上げた。


｢それに皆が居るから大丈夫です心配しないでください僕は全部我慢出来ます僕が我慢すれば大丈夫大丈夫大丈夫だい、｣


急に顔を上げたから真っ白で明るすぎる視界の中、航海の声が不自然に途絶えた。


目を何度か瞬いた俺が発見したのは、


｢我慢しないでって何回言えば分かる？大丈夫じゃない時に大丈夫って言わないでって、教えたでしょう？｣


最年少mirageの口に手を当て、大真面目な顔で言葉を紡ぐ湊だった。



ああ駄目だ、多分いや絶対、俺はこの場に居てはいけない。


無言で見つめ合う2人が醸し出す雰囲気から瞬時にそう悟った俺は、


｢あ！銀子ちゃんに用があったんだった！銀子ちゃあんんん｣


無駄に大きな声でアピールしながら、そそくさとリビングを後にした。



ミシミシと音の鳴る階段を上りながら、ぼんやりと階下での出来事を思い返す。


あの感じからして、航海は俺達の会話から何か嫌な事でも思い出してしまったのだろうか。