ママの手料理 Ⅱ

そんな俺の真剣な顔を見た彼は、ゆっくりと頷いて。


「そうだね、その方が紫苑も安心すると思う。…他に行きたい人?」


周りに座るmirageのメンバーを、ぐるりと見渡した。


既に行く事が決まった銀子ちゃんはパソコンと睨み合い、笑美は家政婦…いや下僕だから論外、サイコパス航海はずっと俯いたまま動かず、琥珀は目を瞑りながら動かない右手を自身の左手で触って弄んでいる。


(琥珀、暇そうだから連れて行きたい!)


そんな警察官に目を止めた俺は、瞬く間に口元に笑みを浮かべて。



彼が居れば、もう恐れるものなんてない。


OASISとの乱闘中、背中合わせになって戦った事が思い出される。


それ以前の盗みの時は琥珀への想いをひた隠しにしていたから、自分の想いを認めるのも勘づかれるのも嫌で、彼と協力して敵を倒す事なんてほとんどなかった。


けれど、あの時は初めて一緒に闘えた。


琥珀が後ろに居ると感じるだけで、琥珀の息遣いが聞こえてくるだけで、まるで燃えるような力が心の奥底から湧き上がってくるのを感じたのだ。


だから、琥珀を連れて行くのはどう?、と提案しようとした瞬間。


「あ、なら僕が行きまーす。壱じゃなくて僕ね」


何処か人を小馬鹿にするような、あのうざったい声が俺の隣の席から聞こえた。