「それで結局モトサヤどころか、プロポーズまでされたってことね」

プリムラインポートオフィスのリフレッシュルームで吾妻祥子は半ば呆れ気味で話を聞いている。

たしかに、別れただの浮気疑惑だの挙げ句の果てに婚活パーティで会社の人に会ってしまったとか、ドラマチックを通り越してバカバカしいことのオンパレードだ。

「さらに、今までほぼ放置だったのが激甘モードに入っていると」

「う・・・ん、まぁそうなの」

なんだか照れくさくてペットボトルのお茶の蓋を開けたり閉めたりしていると、祥子は嬉しそうに笑いながら「おめでとう」とお祝いの言葉をくれた。

「それで今日はデートってワケ?」

「清太郎がプロデュースしたカフェのプレオープンがあるの、そこでプロポーズのやり直しをしたいんだって」

「背広にパンツとか海棠さんのイメージじゃないもんね、面白いけど」
祥子はツボにハマったらしく過呼吸になりそうなほど笑っている。

「と、いうことで気合いで仕事しなくちゃ!今日は残業しないから」

「はいはい、報告よろしく」
二人でクスクスと笑いながら席に戻った。



仕事が終わるとレストルームでアクセサリーをつけて化粧直しをしてから、清太郎に連絡を入れる。

「5分でビルの前に行けるから」

「わかった」
電話を切ってすぐに階下に向う。

待ち合わせをして出かけるってデートみたい。
みたいじゃないくてデートだよね。

もう随分とデートしてなかったから、年甲斐もなく浮かれてる。
「ふふっ」思わず声が漏れてしまったのと同時に聞き覚えのある声で呼び止められた。