清太郎の腕の中で目が覚めた。

清太郎のマンションのベッドで目が覚めた時は、別れを決意したのに、今は自分の部屋で目が覚めて背後からがっちりとホールドされている。

露店の1000円のリングでもいいと思っていた清太郎からのエンゲージリングがとんでもない代物で、薬指でキラキラと輝いている。

指輪のサイズがぴったりだとか、必死になって部屋に通ってくれたとか今まで清太郎が何を考えて、私のことをどう考えていたのか不安だったが、昨夜の数時間でそれらのことがすべて吹き飛んでしまった。

婚活パーティでやけを起こして誰かとマッチングとかしなくてよかった。
と、言っても結局は清太郎と比べてしまって誰と話しをしても気が乗らなかった。

カーテンの隙間から差し込む光に左手をかざすと、プラチナ台に乗っているダイヤに光が反射する。
その光を眺めていると、背後からその手を絡め取られ口づけをされ身体ごと向きを変えられた。

「指輪、サイズがぴったりだね」

「そりゃね、麻衣が寝てるときにこっそり計ったから」

「そうなんだ、全然気がつかなかった」

清太郎が寝ている私を指のサイズを測る姿を想像する、スーツとか着てないよね?私が泊まってるってことは・・・裸で測っていたってこと?

「どうやって・・・」思わず声が出てしまった

「ヒモだよ」

「紐?」

「そう、丁度いい紐が見つからなくてマスクから外した・・・って、新しいマスクを使ったからな」

そのこだわり何?裸でマスクから紐を外して私の指に巻いてる姿がいつもの清太郎からは想像できなくて吹きだしてしまう。

「は?何?なんか俺そんなにウケること言ったか?」

「違うというか、裸でマスク紐を薬指に巻いてる姿とか想像しちゃって」

清太郎はこめかみを指で押さえると「う~ん」と唸る。その姿も格好いいと思うけどやっぱり裸だ。

「それ以上に、昨日のプロポーズ一生忘れないかも」

「まぁ、忘れられたら困るけど」

清太郎の腕の中で左手に輝くリングを見つめながら
「将来、子供が出来てどんなプロポーズされたの?って、聞かれたらネクタイがキマって背広をピシッときこなして下半身はパンツだけの素敵なプロポーズだったって教えてあげるわ」


「あああああ」
清太郎は唸りながら頭を抱えている。
そういえば、付合い始めた頃はこんなギャップがたまらなく好きだったんだ。
清太郎はずっと変っていない、ズレてるところも言葉が足りないところも、それなのに才能があって仕事が出来るところも。
この先、人の上に立ちまとめて先導していく、それが出来る人。

「プロポーズだけはやり直しをさせて欲しいな」

「どうして?私は清太郎らしくてすごく素敵だと思うけど」

清太郎は私に覆い被さるような体勢になると
「麻衣ってけっこう意地悪なんだな、それも可愛いが反撃はさせてもらう」