やがて閉会の時間が来て、校舎内は生徒だけの世界になった。

いっときのお祭り騒ぎを終え、皆満ち足りた笑顔で騒いでいる。

あかねがキッチンコーナーの片づけをしているところへ玲人がやって来た。玲人があかねに寄ってくるのは、授業のサポートをして以来、まあまあ経験してきたことなので、表面上は普通に出来た。しかし内心では心臓が50メートルダッシュを始めた。

(平常心、平常心!!! 玲人くんは、打ち解けたクラスメイトに話し掛けてくれてるんだから!!!)

「玲人くん、お疲れさま。残ったやつだけど、紅茶飲む?」

あかねが紅茶のパックを持つと、玲人はにこりと笑った。

「あは。良いの?」

「もう処分しちゃうだけだからね」

そう言ってあかねは手早くカップに紅茶を注いだ。玲人がカップを受け取り、ひと口含む。

「はは、そう言えばずーっと接客してたから、のど渇いてたんだな」

「気づくよね!? 普通」

「だって、ずっと二時間とか歌って喋りっぱなしの生活だったから」

あっ、そうか。『FTF』で活躍していた頃は、ライブで3時間とかぶっ通しで歌い喋りを繰り広げていた。でも、ライブの途中で水は飲んでいたし、やっぱり水分補給は必要だったらしい。