「ふ、いいよ、そうしな」
「いいの?」
「うん」
「ありがとう!サナちゃんも絵描くの、楽しんで!」
新谷くんと帰れることがそんなに嬉しいのか、ぱぁっと笑顔が輝く。
親友としては少し寂しいけど、まあ、私も由都とのことを言えてないし。
複雑な気持ちで沙葉を見送った。
鞄を持って美術室まで行くと、もう由都が先に待っていた。
「お待たせ」
「いや、俺もさっきです、来たの」
由都の手には開かれた本があって、その本を閉じる動作も、なんだかよく似合っている。
さすが、優等生。
本なんて、久しく読んでいない自分に思わず苦笑いする。
沙葉から聞いたことがあった。
由都はいつも帰りが遅いくせに、成績だけはトップ周辺にいるから不思議だって。
ちら、と由都を見る。
制服のシャツだって新谷くんみたいにボタンは開けていない。
ネクタイも型崩れすることなく真っ直ぐで、本当にきっちりした見た目。