水戸は少し苦手だ。

後ろでは、冷たいなーもう、と、けーすけが相手をしようとする。

俺の好きなお菓子はね、と代わりに答えようとしたけーすけに水戸が言った。


「あっ、大丈夫だから」



……こーいうとこが、やっぱり苦手。


いつもなにかと絡んでくるから、前に2人に言われたことがある、好かれてるんじゃないかって。

だけど、他の女子のように告白してくるわけでもないから確信はない。



「由都、クッキーうまいよ」

「よかったね」



クッキーより、先輩だ。

今は先輩、それにしか本当に目がいかない。


先週、手を繋いだのなんか、そりゃもう、心臓がやばかったわけで。

なんで俺、平静装えたんだって不思議なくらい。


目を合わせるのも10秒だと短いから俺が嫌で、1分だと長すぎるから先輩に断られそうで。

だからちょうどいい秒数を探して30秒にした。


結局、俺が負けたけど。

…だって、握り返すのは、反則でしょ。



早く放課後になってくれ。

マジで先輩に会いたい。



相変わらず先輩ばっかの脳内は、授業が始まっても変わらなかった。