ありがとうございます、さようなら。

そう挨拶してトボトボと廊下を歩いていると、向こう側から誰かが向かってくる気配がして顔をあげる。


「先輩」

「っ」


無邪気な笑顔で軽く手を振ってきたのは、由都だった。


……どうしよう。

今、一番会いたくなかったのに。




視線を下にして思い返すのは、数時間前に聞いた会話だ。



「マジで!?」


ちょうど職員室に用があって、1階に足を運んでいた休み時間。

知っている声色とその大きさに目を向けると、その先には畑宮くんがいた。

もちろん、由都と、花火をした時に会った、もうひとりの猫顔くんも。


床を蹴って飛び跳ねている畑宮くんはすごいテンションが高そうで、その隣で猫顔くんも笑っていた。

気になって、とっさに隠れて聞いてしまった自分を殴りたい。