アメリカから帰ってから、零は前よりも華恋に積極的に愛を伝えるようになった。それはまるで、海外の恋愛映画のように思えてしまう。

「おはよう、華恋」

華恋が同じベッドで目を覚ますと、零はニコリと微笑んで華恋の頭を優しく撫でる。そして唇ーーーではなくおでこにキスが落とされた。

「今日も綺麗だね、愛してるよ」

それだけで華恋の顔は赤く染まり、それを隠すために華恋は寝返りを打って零から顔を逸らす。そうしたかったのだが、零の腕がしっかりと華恋を捕まえる。

「逃げないで」

煮詰めた砂糖にさらに砂糖が振りかけられているような、そんな甘い雰囲気が漂う。恋愛慣れなどしていない華恋は、気を失ってしまいそうなほど頭がクラクラとし、心臓は起きたばかりだというのに激しく動いている。

「か、鍵宮さん……」

離してください、そう言おうとした華恋だったのだが、華恋の口を零の大きな手が覆う。零の表情は、先ほどの「好きな人といられて幸せ」と言いたげなものから、捨てられた子犬のような悲しげなものになっている。