溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。

ぽろぽろと双眼から溢れる涙で視界が滲む。

良かった。

それだけだった。

ゆっくりしゃがむと,またぽろぽろぽろと溢れ落ちる。

こんなの,変。

せめて他の人には気付かれないようにと,よりいっそう私は頭をしまいこんだ。

千夏くんが私の前に座って,じっと私を見る。

そして,ポンっと控えめに,私の肩に手を置いた。

真香も慌てたようにしゅばっとしゃがんで,私の右手をぎゅっと握る。

そして



「おつかれ。真理の真面目なところ,すごくいいと思うよ」



またぎゅうっと力を込めた。



「ありが,とう」



涙を堪えようとすると,きゅっと眉が寄る。

千夏くんが口を開く音がして。

次に聞こえたのは



「真理?」



凪の声だった。